Posted by 葉村真樹 インダストリーディベロップメントマネージャー

前回の Google AdWords 業界別ご利用動向 自動車業界「新車購入者の検索行動」編に続き、今回は自動車購入検討者の検索キーワードについて概観したいと思います。

新車購入者の情報収集のプロセスは、前回見てきたとおり「日常生活~思い立ち」、「情報収集時(ディーラー訪問前)」、「ディーラー訪問時」、「購入時(最終決定)」の大きく 4 つの段階に分かれます。そして、これら 4 つの段階ごとに、検索するキーワードに一定の傾向があることが、今回の調査で分かりました。下表は各段階での代表的な検索キーワードの例を示したものです。

表 購入プロセスと検索キーワード例

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各段階ともに、おおよその予想のつく範囲のキーワードが検索されています。すなわち、第 2 段階の情報収集時(ディーラー訪問前)は特定のモデルに関する概要情報や、ディーラーや試乗車について検索し、第 3 段階のディーラー訪問中になると個別車種モデルの詳細情報や競合比較、最終段階には価格や値引き、支払い関連の情報へと移行しています。ただ、若干様相が異なるのが、最初の「日常生活~思い立ち」段階で、この段階では、「情報収集時(ディーラー訪問前)」段階と同じ「車種モデル名」を入力していたとしても、その情報収集ニーズが異なることに留意する必要があります。

下図は、「日常生活~思い立ち」段階で、インターネットで情報収集を行った人に対して、どのような情報を収集したかを尋ねた結果です(複数回答)。


図 「日常生活~思い立ち」段階でインターネットで収集した情報

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ここから「自分が保有するクルマに関する情報」と「新しく発売したクルマの情報」の 2 つが圧倒的に多いことがお分かりになるでしょう。そして、このことから、この段階で例えば「車種モデル名×パーツ」などと検索している場合は、恐らく自分の現所有車についてのパーツについての情報を収集していることが考えられます。また、ここで具体的に登場してきた車種モデル名の多くが「日産 GT-R」など、購入層が必ずしも大きくない車種モデル名が検索されていることから、新発売となった車種やニュース性の高い車種への興味から検索されていると考えられます。

一方、当然のごとく「情報収集(ディーラー訪問前)」段階では、同じ車種モデル名でも、実際の購入車を含む名前が検索されています。そして興味深いのは、この段階が特に特定の企業ブランドや車種名、すなわち固有名詞が検索されているのが多いことです。下図は具体的な数字を除いたイメージを示したものですが、企業ブランド名を含むキーワードが検索された実数と、実際に検索された全てのキーワードの中に占める企業ブランド名を含むキーワードの比率は、情報収集時点でピークになり、購入プロセスの終盤に向けて、減っていく傾向にあることが分かります。


図 購入プロセス段階別に見た企業ブランド系キーワードの検索数の推移

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この点は実は、自動車購入者の多くは「思い立ち」から「情報収集(ディーラー訪問前)」段階で、ある程度具体的な車種を購入車として想定していることに因っているようです。今回の調査によれば、思い立ち時に購入対象として想定していた車種数は平均で 1.9 台と 2 台を切っており、業界でおおよそ考えられていた 3 台を大きく下回っています。もちろん、3 台以上を想定していた人も 3 割弱存在するのですが、1~2 車種で 7 割を超えているので、購入を思い立ってまず検索するのは、購入候補となっている具体的な車種名となるのです。

今回の調査はインターネット調査で行われたため、調査対象者はネットユーザーとなるために、このような結果が出たとも考えられますが、いずれにせよ新車購入者は早い段階から、既に購入候補を絞り込んでおり、むしろその後、購入候補を増やして行っている可能性が考えられます。

下図は実際に購入した車種が当初想定していた車種に含まれていた人と、含まれていなかった人の割合をみたものですが、購入者のおよそ 10 人に 1 人は、当初想定していた車種とは異なる車種を購入しているのが分かります。すなわち、思い立ってから実際に購入するまでの間に、新たにショッピングリストに載せてもらい、購入車として検討してもらう余地が十分にあるということです。


図 実際に購入した車種は、当初想定していた車種に含まれていたか?
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前回、「日常生活~思い立ち時」段階での TVCF の影響は大きく、恐らく最初のショッピングリストの作成を大きく左右しているものと考えられます。しかし、仮にここでリストから漏れたとしても、購入プロセスの中で、リストに載せてもらい、大逆転を狙うことは不可能なことではありません。前回も見たとおり、購入者の 7 割以上はネットでの情報収集時に検索を行っており、このときに適切な広告を提示することで、自社を購入候補として考えていなかった人を引き込むことも可能なのです。検索連動型広告はそのような可能性も秘めている、と考えられるでしょう。