Posted by Chi Tran 教育業界担当 インダストリーアナリスト
親や子供は、教育や学習に関する様々な悩みについて、インターネット上でも情報収集をするようになりました
1)。日本では子供の数が減少する一方、教育や学習に関連する検索数はむしろ増加傾向にあり、校外学習サービス
2) に対する検索数も同様に増加しています。
「教育業界の最新検索トレンド」の第 2 回目では、母親
3) や子供が校外学習サービスを決定する際、また利用する際に、インターネットをどのように活用しているかを読み解いていきます。
(第 1 回目「日本を取り巻く留学事情」は
こちら)
1) 最近では、子供のしつけ方について調べる親や学校で分からなかった単元を復習する子供が、YouTube 等で解説動画を視聴するケースも見られる
2) 通信教育、学習塾、家庭教師、自宅でのオンライン学習などの、学校外の教育サービス
3) Google 調査(2015 年 12 月)によると、校外学習サービスの意思決定には父親よりも母親が深く関与しているため、以降の調査結果では対象を母親に限定して分析する
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校外学習サービスを決めるまでの、インターネット活用状況
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- 母親の半数以上が、校外学習サービスを検討する際にインターネットで情報収集
- 母親の 3 人に 1 人は、インターネット上の情報だけで申し込みの意思決定を行う
- 子供本人も積極的に意思決定に関与するように(中学生の 45%、高校生の 63%)
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(1)意思決定プロセス
親や子供は「早い学齢から学習習慣を身につけさせたい」「受験に備えたい」「学校での成績を改善したい」といったきっかけで、校外学習サービスの利用を検討します。母親は “ママ友” の口コミを始め、企業からのダイレクトメール、テレビ CM など、様々な経路でサービスに関する情報を得ていますが、母親の半数以上はインターネットでも情報収集をしていることが分かりました
4) 5)。また母親の 4 人に1 人は、インターネットで現在利用しているサービスを知ったと答えています。
母親の中には、利用するサービスの候補を決めた後、実際に申し込みをするまでに、サービスに関する資料請求、無料体験授業や説明会への参加など、様々な事前確認プロセスを踏む人もいます。しかし母親の 3 人に 1 人はそのようなプロセスを踏まず、インターネット上の情報だけでサービスに申し込んでいることが分かりました。
教育サービスは経験財であり、利用前の情報収集段階ではサービスの品質を判断することが難しいため、母親の半数以上が 2 週間以上かけて慎重に検討します
6)。しかしインターネット上の情報を元に意思決定を行う母親は増えており、教育サービスの提供者にとっては、インターネット上でのユーザーコミュニケーションや申し込みへの動線を確保していくことが益々重要になると考えられます。
*2014 年に校外学習サービスを開始したユーザーと、2015 年に開始したユーザーを比較
A)質問『現在利用中の校外学習サービスをどのようにして知りましたか?(複数回答)』に対して、「インターネット上の情報」「インターネット上の広告」を選んだ人の割合
B)質問『現在利用中の校外学習サービスを決める上で、参考にした情報源は何ですか?(複数回答)』に対して、「インターネット上の情報」「インターネット上の広告」を選んだ人の割合
C)質問『現在利用中の校外学習サービスに決めてから入会するまでに、行ったことは何ですか?(複数回答)』に対して、「インターネット上でサービスに関する情報を確認した」を選んだが「資料請求をした」「無料の体験授業に行った」「説明会に参加した」のいずれも選んでいない人の割合
Source: Google 調査(2015 年 12 月)
(2)意思決定者
ところでサービスの意思決定には決裁者である親だけでなく、実際の利用者である子供本人も関与しています。子供本人の関与度合いは学年が上がるに連れて高くなり、高校生においては 6 割以上の子供が意思決定に携わるようになりました
7)。また中高生のスマートフォン利用率は増えており、子供本人も学習サービスに関する情報をインターネットで検索するようになっています。教育サービスの提供者にとっては、決裁者である親だけでなく、子供本人に対するコミュニケーションもより重要になると考えられます。
*2014 年に校外学習サービスを開始したユーザーと、2015 年に開始したユーザーを比較
D)質問『現在利用中の校外学習サービスについて、情報収集〜利用の決定に至るまでのプロセスで、関与した人をそれぞれ選んで下さい(複数回答)』の結果を元に集計
E)「親子で協議して決めた(親が発案)」とは、「サービスの情報収集・比較検討に親は関与したが子供は関与せず、最終意思決定時のみ親子で協議した場合」を指す
Source: Google 調査(2015 年 12 月)
4) 検討しているサービスの口コミの他、料金や教材の内容、また自宅の沿線上にどのようなサービスが存在するかなど、多岐に渡る
5) 1 日を通して、PC よりもスマートフォンからの検索の方が多い
6) 検討期間は短くなっている。2 週間以上かけて検討するユーザーは、2014 年は全体の 66% であったが、2015 年は全体の 57%
7) なお、男親の関与は学年が上がるに連れて弱くなる傾向が見られた
続いては、ユーザーが実際に利用する校外学習サービスのオンライン化トレンドを読み解いていきます。
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高校生の 4 人に 1 人がオンライン学習サービスを利用。中でも成績上位層や習い事にお金をかけていない層で利用率が高い
- 「オンライン学習」の検索数は急上昇。「学習塾」に関する検索数を上回る
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学校外での学習手段は、これまで通信教育や学習塾のようなオフラインの形態が一般的でしたが、近年ではオンラインで学習できるサービスも登場し、ユーザーが受けられるサービスの選択肢は広がっています。例えば、ユーザーは学校の授業を予習・復習する際や、学習塾の授業で分からない単元がある際に、手持ちのデバイス(通信機器)で解説動画を視聴しているようです。
現在、高校生においては 4 人に 1 人がオンライン学習サービスを利用しており、うち半数以上は通信教育や学習塾は利用せずオンラインを校外学習の中心にしています。但し中学生以下の利用率は限定的であり、「学習習慣が身に付いていないうちは、PC やスマートフォンでの学習は子供の集中力を削ぐ
8)」などといった親の懸念が表れています。
また高校生の中でも、学校の成績が上位の層や、習い事にあまりお金をかけていない層などにおいて、オンライン学習の利用率が特に高い傾向が見られます
9) 。自分の好きな時間に、自分が分からない単元の解説授業だけを、低価格で視聴できる点が支持されているようです。他方で、都心部と人口密度が低い地方部では、利用率に大きな差は見られませんでした。
F)質問『現在利用中の校外学習サービスは何ですか?(複数回答)』に対して、「オンラインでの動画授業の視聴(PC、スマートフォン、タブレットを使用)」を選んだ人の割合
Source: Google 調査(2015 年 12 月)
オンライン学習に対する関心の高まりは、検索トレンドからも見ることが出来ます。通信教育や学習塾などの主要な学習形態と比較しても、オンライン学習の検索数は対昨年比で倍以上に伸びており、学習塾に関する検索数を上回りました。
既に一部のユーザーにとって「オンライン学習」は校外学習の中心となっていますが、学習習慣に対する懸念を感じるユーザーも一方で存在しています。今後ユーザーの意思決定プロセスにおいてインターネットがより活用されていく中で、また様々な学習形態が並存する中で、教育サービス提供者は提供価値やサービスの内容をインターネット上でも訴求していくことが重要になります。
こうしたインターネットユーザーに対するアプローチには、検索広告、ディスプレイ広告、YouTube 広告を始めとするオンライン広告も、ぜひ積極的にご活用ください。
8) Google 調査(2015 年 12 月)による、母親からの実際のコメント
9) 「学校での成績上位 10% に入る」と回答した高校生のうち 39% 、「習い事にかける月額が 5,000 円未満」の高校生のうち 38% が利用。なお世帯年収とオンライン学習利用率の間には、目立った相関関係は見られなかった