ディスプレイ広告営業部 柳井 亮

オーディオ、ビデオ、テレビ、情報、通信、半導体、コンポーネントなどからなるエレクトロニクス事業を展開するソニーの日本国内におけるマーケティングおよびセールスを担い、ソニーブランドの価値向上をめざすソニーマーケティング株式会社。2011 年 9 月 13 日に日本初の試みとなる YouTube マストヘッド活用のライブ配信により、ポータブルオーディオプレーヤー「ウォークマン」の新商品発表会の生中継を行いました。視聴者数 15 万人、最大瞬間視聴数 6 万を獲得した本施策について、ソニーマーケティング株式会社 コミュニケーション戦略部 マーケティングコミュニケーションマネジャー 長島 純氏にお話をお伺いしました。


ソーシャルメディア時代の新しい商品発表会のあり方を提示
メディア向け商品発表会をお客様にも同時に生中継の形で発信したのは、「ウォークマン」として初の取り組みでした。企業が自らのイメージを一方的にコントロールすることができない時代では、いかに生活者の中で流通されやすい情報を増やせるかが重要になります。そのため、商品開発者がどんな思いで開発したのか、直接自分の言葉でお客様に伝え、場を共有することで、共感性を高め、流通されやすい情報にすることを重視しました。また、「ウォークマン」やそのコミュニケーションキャンペーン「Play You.」には、10 代のお客様に対して、ソニーと接する入り口「My first Sony」としての役割を担わせていきたいという意図もありました。

そこで、ターゲットである 10 代が日常的にエンターテイメントを楽しむ場として浸透している YouTube トップ画面の大型ディスプレイ「マストヘッド広告」のスペースを活用することが通常のライブストリーミングとは意味合いが違い、情報拡散と認知拡大に効果的であると考えました。マストヘッドでの生中継は YouTube としても新しい取り組みであり、同社にはソーシャルメディア時代の新しい商品発表会のスタイルにチャレンジしたいという思いもありました。他の動画配信サイトとは桁の違うお客様に見ていただけるのではないかという期待もあり、YouTube での展開を決定しました。


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YouTube での事前告知でターゲット顧客をライブ配信へ誘導
今回の発表会は、ソニーの商品開発担当者らによる商品プレゼンテーションに始まり、キャンペーン「Play You.」の新メッセンジャー西野カナさんが登場するという進行でした。ただし発表会の生中継を見ていただくためには、その事前告知の細かい情報設計が必要です。ライブ配信については、当日事前に YouTube 内や自社サイト、SNS などで告知を行いました。さらに、西野さんが発表会に登場することは一切シークレットでしたが、唯一西野さんの公式サイトで、ソニーの商品発表会であるとは明言せずに「YouTube のライブ配信に出演する」という旨だけの告知が前日に出されました。これによって、当日事前に YouTube にアクセスしたファンのみが、「今年のPlay You.のアーティストは西野カナなのだ」と報道メディアよりも速く情報を入手できたのです。
このように情報をコアなファンに特別に速く届けるとともに、YouTube マストヘッドでの予告から実際のライブ配信へとつなげたことで、一気に情報量を高めることができ、結果、情報の拡散やバズの醸成につながりました。結果的に 30 分間で、視聴者数はユニークユーザー 15 万人、最大視聴者数 6 万人となり、想定を大きく上回る結果となりました。

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情報検索の拡大や商品購入意欲の醸成に貢献
今回の施策において、ライブ中継時に発生したバズの量も昨年同時期の新商品発表時と比較して約 7 倍、グーグルのキーワード検索数(Google Insights for Search での結果)も昨年同時期の 2 倍以上となりました。

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生中継後の「Play You.」キャンペーンサイトへのアクセスも予想をはるかに超える数となりました。その数は、当初見込みの約 5 倍で、商品ページへのコンバージョン率も目標の 5 倍以上という驚くべき結果となりました。従来は、新商品発表時にまずガジェット愛好家層やコアなファンが話題にしてくれ、次に価格比較サイトに掲載。その後、発売時にキャンペーンを立ち上げ、広くプロモーションしていく流れが主流でした。しかし、今回は、新商品発表会をお客様にオープンにしたことで、最初からターゲットにリーチすることができ、結果、「ウォークマン」に関する情報量を高めることができたのです。本施策に関する調査でも、「新商品を知っていた方の 5 人に 1 人はライブ配信を見ていた」、「新商品発表会を認知していた層は特にターゲットの 10 代 20 代男女の比率が高い」、「ライブ配信に接触した層は非接触層に比べて商品理解と購入意欲喚起度が高い」など、ライブ配信がターゲット顧客層の行動変容を促していることが明らかとなっています。さらに、ライブ配信を認知した人々の約半数が、「興味を持ってネットで情報検索をした」と答えており、「ソニーのウェブサイトに商品情報を見に行った」という回答は約 3 割にのぼりました。商品発表という早期のタイミングで多くのお客様との接点を持てた機会を有効に活用すべく、商戦期でのテレビ CM 放送時には、ライブ配信に来訪した方へのリマーケティングを実施し、再度商品へのアテンションを高める試みも行っています。これによりターゲット顧客に再来訪を促すことが可能となり、より長期的なエンゲージメントを築きながら購入アクションへと誘導できるようになりました。

「良いコンテンツを作っても、見てもらえなければ、世の中に情報が流通することはなく、広がっていきません。従来のマスメディアが担ってきたアテンション機能を YouTube での生中継に担ってもらい、共感の広がりをソーシャルメディアも使いながら流通させていき、接点を持ったお客様には、リマーケティングも活用して継続的に訴求できたことが、新たな新商品発表の要諦だと考えています。」(長島氏)