Posted by アジア太平洋地域 広告マーケテイング統括部長 ギャップ・キム

10 年前、企業がスクリーン上で生活者に呼びかけることができたのはテレビなど限られたメディアのみでした。しかしながら、今日のメディア概況は多様化し、生活者はさまざまなデバイスやプラットフォームを活用して時間を過ごしています。

今年、YouTube は 10 周年を迎えました。この 10 年で起きた動画の変化を、現在活躍しているクリエイターや YouTube を活用する企業を通して振り返ってみたいと思います。


この 10 年の動画の世界で最も変化したことは「選択」


私たちはさまざまなコンテンツがあふれる動画の黄金時代に生きています。オンラインでは、人気アーティストの公式ミュージックビデオや、ハウツー動画、アナと雪の女王のカバー動画まで、あらゆるものを自ら選択して視聴することができます。10 年前と現在では、選択肢は比較にならないほど増え、YouTube には全世界で毎分 300 時間以上もの動画がアップロードされています。YouTube のようなサービスが登場するまで、動画を探し出すのがどれほど難しかったか、今では思い出すこともできません。江南スタイルが世界中で 20 億回以上も再生されるなど、想像もできなかったことだと思います。

プラットフォームの登場だけでなく、世界中、特にアジアで、スマートフォンの普及により、メディアの視聴方法も変わりました。日本でのスマートフォンの利用率は 54 % *まで浸透し、インド、インドネシア、ベトナムでは、10 億人もの生活者がモバイルを使い始めています。場所を問わず好きな時に動画を視聴できる利便性により、モバイルは動画を視聴する時に最も好まれるスクリーンとなりつつあります。世界全体で YouTube のスマートフォンでの視聴時間は 50 %を超え、前年と比べ 90% 増加しました。

*Google Consumer Barometer 調査結果より(実査期間 2015 年 1- 3 月


「選択」の時代に企業はどう対応すべきか


現在、ユーザーは検索するだけで、必要な情報やコンテンツを見つけることができ、企業は生活者との絆を形成するためにさらなる努力を必要としています。WREN というニューヨークの小規模ファッションブランドが $ 2,000 以下の予算で撮影・制作した「First Kiss」や、自動車メーカーのヒュンダイが制作する壮大な動画広告、「Message to Space」 を見ると、あらゆる規模の企業は商品、サービスやブランドに対する共感を醸成するために、広告は魅力的でオーセンティック(本物)である必要があることがうかがえます。

ユーザーが選択視聴できる「TrueView 広告」の提供を開始した時、自ら好んで広告を見るユーザーがいるのかと多くのマーケターが疑問を抱きました。しかし、企業が WREN やヒュンダイのような魅力のあるストーリーを伝えることで、ユーザーは自ら広告を興味あるコンテンツとして視聴することがわかりました。なかでも、Nike Football の動画広告は 1 億回以上再生され、話題を呼びました。昨年の 「全世界のトップトレンド動画 2014(音楽を除く)」のトップ 10 中 4 つにも、企業のプロモーション動画が並びました。


YouTube のトップクリエーターや YouTube を活用する企業からマーケターが学べること


The Viral Fever videos(インド)やヒカキン(日本)、Troye Sivan(オーストラリア)などのトップクリエーターはこれまでにないスピードで、YouTube で何百万人というファンを築き上げてきました。では、どうすれば企業はこのように生活者の支持を得ることができるのでしょうか。これまでの 10 年間の YouTube の歴史を振り返り、このプラットフォームを最大限に活用するための 2 つのポイントをご紹介します。

  • オーセンティック(本物)であること: 実在の人物が本当にあったストーリーを伝える。200 年の歴史を持つアイリッシュウイスキーの Laphroaig は、200 周年を記念して、このポイントを踏まえたユニークなプロモーションを実施しました。顧客がウィスキーを飲んだ感想を共有してもらい、その中からユニークな感想や感動的なコメントを集め、人気のクリスマスキャロルにのせて合唱するというフォーマットの動画広告を展開し、YouTube で話題を呼びました。(例:「一杯の Laphroaig は、まるで煙突掃除のブラシから垂れる水滴をなめるような感覚で、それが大好きだ。」)すべての動画は 100 万回以上再生され、Laphroaig のように特定の顧客層に深い支持を得るブランドにとっては驚くべき結果となりました。
  • 関連性を持たせること: 企業は、YouTube でユーザーが視聴し、夢中になるものを理解し、彼らの興味と関連性のあるコンテンツを制作する必要があります。IKEA はテクノロジーに興味がある若者からの支持を得るために、シリコンバレーの会社が新サービスを発表する際に制作する「ローンチ動画」を真似た最新カタログ動画を制作しました。このカタログ動画は「Bookbook」と名付けられ、わずか 2 週間で 1,500 万回以上も再生されました。


これからの 10 年


これから先、さらに何十億人というユーザーがインターネットを使い始めるようになります。彼らの多くがスマートフォンによって初めてウェブの世界に触れ、私たちが考えるコンテンツの概念を作り変えていきます。この革新を理解している企業こそが、未来において確固たる地位を築いていけるといえるでしょう。

最後に、2005 年からの YouTube の歴史を振り返るとともに、話題になった YouTube 動画を紹介します。

2005 年
YouTube サービス開始
YouTube に初めて投稿された動画「Me at the zoo

2007 年
アジア地域にて YouTube サービス開始

2010 年
TrueView サービス開始
広告の視聴・スキップが選択できるように

2013 年
ダンスミュージックに合わせて約 30 秒間踊るフォーマット「Harlem Shake」が大流行

2014 年
韓国人アーティスト Psy の「江南スタイル」が 20 億回以上の再生回数を記録

2014 年
NIKE の「Winner Stays」が 1 億回以上再生された初めての広告に

2015 年
YouTube のモバイルからの視聴が全世界で 50 % を超える