Posted by 緑川 徹生 - パフォーマンス ソリューション エキスパート、八十原 光良 - インダストリーマネージャー



ブライダル情報サービス「ゼクシィ」、自動車関連情報サービス「カーセンサー」、高校生の進学情報サービス「リクナビ進学」などを展開するリクルートマーケティングパートナーズ。同社では購入頻度の多くない中古車においても、情報源としてスマートフォン、モバイルアプリの利用意向が高まることを予測し、先行してモバイルアプリを開発、モバイルアプリからのコンバージョン増加、ロイヤルユーザーの醸成に成功しています。今回は Google の考える Micro-Moments の考え方と合わせて同社の取り組みをご紹介します。


Micro-Moments について


日本人の 50% 以上がスマートフォンを手にするようになった現在、生活者の生活環境が大きく変わってきています。こうしたテクノロジーの進化によって、何かをしたいと思った生活者は、すぐに目の前にあるデバイスを使って調べる・買うなどといった行動を起こすようになりました。そうした瞬間のことを、Google では Micro-Moments と呼んでいます。これらの瞬間は、生活者が何かを決断したり、またはブランドに対する好みを形成する、マーケターにとって大切な瞬間です。

また、こうした Micro-Moments は多くがモバイルから生まれています。Google の調査によると、日本では生活者の 49%* が購買判断に検索結果を考慮しているといいます。そして、「何かを知りたい」と感じた生活者が、現在一番検索を行うデバイスはモバイル**です。また、「何かを買いたい」という時について、生活者の 40%* がモバイルで商品を比較したことがあると回答をしています。

Google では、こうした Micro-Moments を活かしたマーケティングを行うには、
1) Micro-Moments を正しく見極めること、
2) Micro-Moments における生活者の「意図」を汲んだうえで、「最適な情報」を「最適なタイミング」で届けること、
3) 1), 2)ができたかの効果測定をすること
が重要だと考えています。詳細についてはこちらもご参照ください。

*Google コンシューマーバロメーター、**Google 社内データ


導入の背景と戦略


リクルートマーケティングパートナーズが自動車関連情報サービス「カーセンサー」を運営している中古車業界でもこの「何かを知りたい」、「何かを買いたい」という Micro-Moments がモバイルから多く生まれています。生活者は、気になる自動車について「知りたい」、「買いたい」と思った瞬間に目の前にあるモバイルで調べており、その結果として主要人気車種名ワードの検索はスマートフォンからの検索が全体の 70%** を占めています(下図 1 参照)。

また、同社が独自に行ったリサーチでは、購入頻度の多くない中古車購入においても、情報源としてスマホ、及びモバイルアプリの利用意向が高まることが予測できました。そのため、コンバージョン数の拡大、モバイルアプリの特性を活かしたロイヤル ユーザーの醸成を目的として、アプリ時代の到来に先駆けてモバイルアプリへの投資の意思決定を行いました。

**Google 社内データ

(図 1 )主要車種名の検索トレンド



施策における工夫とポイント


1), 2) Micro-Moments を見極め、「最適な情報」を「最適なタイミング」で届けること


リクルートマーケティングパートナーズがモバイルアプリを開発する上で工夫した主な点は①ディープリンクの実装と、②モバイルアプリ内行動ログを活用したユーザー毎の志向性にあった広告クリエイティブ表示です。

①ディープリンクの実装により、モバイルアプリユーザーが興味のある中古車について「知りたい」、「買いたい」、と思ってスマホを手にとった時、すなわち Micro-Moments でスムーズにモバイルアプリを活用して貰うための仕組みを実現しました。具体的には既にアプリをインストールしたユーザーの Google 検索結果画面にモバイルアプリ ページのリンクを表示することで、1 クリックでモバイルアプリの該当車種画面にユーザーを誘導することが可能になりました。

また、②については、モバイルアプリ内に蓄積したユーザーの行動ログを活用することにより、ブランドや価格など、ユーザー毎に最も関連性の高いクリエイティブを広告として表示できる仕組みを実装しました。

3)効果測定


モバイルアプリではインストールから数か月間後であってもアプリ内の検索行動やコンバージョンが発生することから、同社ではアプリの CPI(Cost Per Install、インストール単価)だけでなく、インストール後 6 か月の計測期間を考慮した LTVCPA(Life Time Value CPA、生涯獲得単価)で ROI を判断しています。


施策後の成果


①の施策


コンバージョン数について、モバイルアプリからのコンバージョンが順調に増え、現在では全体の 約 15% まで増加させることに成功しました(2015 年 3 月時点、下図 2 参照)。


(図 2 )カーセンサーにおけるデバイス別コンバージョン(中古車下見)割合


また、ロイヤル ユーザーの醸成についても、モバイルアプリ ユーザーは長期に亘ってコンバージョンを生み出しており、初回来訪の 31 週後には 1 週目と比較し 4 倍以上のコンバージョンをしています。セッション数、PV 数についても、モバイルアプリ ユーザーは PC(ウェブ)と比較し、1 ユニークユーザー当たりセッション数 +526%(※5.26 倍)、PV 数 +1,573%(15.73 倍)とロイヤル ユーザーであることがわかります(下図 3 参照)。


(図 3 )ユニークユーザー当たりのセッション数、ページビュー数



②の施策


関連性の高い広告クリエイティブを配信し既存ユーザーに向けたディスプレイ広告のリマーケティングを行った結果、顕著な効果増が確認されました。具体的にリマーケティング配信の CPA について、PC のキャンペーンを基準とした場合、モバイルウェブで -2%、モバイルアプリでは -24% も改善されました。(下図 4 参照)


(図 4 )リマーケティング配信の CPA


アプリにおいては、ディープリンクを活用することで、アクティブなユーザーに対してよりよいユーザービリティを提供することが可能となり、大きな成果を収めています。


今後の展望


「当社ではモバイルアプリを戦略上重要視しています。利便性の高いユーザー エクスペリエンスを提供できる、アプリの利用によるカスタマー満足度の向上、ノーティフィケーション機能などでカスタマーの再来訪を促進し LTV 成果を向上させるなど、アプリ特有の価値と可能性があると思います。

施策に関しては「やってみないとわからない」という思想の基、積極的に新規施策に挑戦していくことで競合劣位になりにくい状況をつくっています。マーケットの新しい常識になるような施策は結果の予測が難しいため、施策の確度を見極めるプロセスは毎回行いながらも、積極的にチャレンジしたいと考えています。

今後より注目したいのは、Google が提唱する Micro-Moments という考え方です。当社が他媒体でエスノグラフィ調査を行い多数の生活者行動を細かく分析したところ、エレベータの待ち時間等、隙間時間のモバイル利用が一定量ありました。生活者の細かい行動をとらえ対応していくことが、今後より重要になってくると思います。」


執行役員 ネットビジネス本部
プロダクトマーケティング部 部長 櫻井 康平氏


同 コミュニケーションデザインG 平野 裕樹氏


*PDF 版の事例はこちらからダウンロードできます。
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株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
  • http://www.recruit-mp.co.jp/
  • カスタマーとクライアントの出会いを創出することで、"しあわせの総量"が増えている世界を目指し、ブライダル情報サービス「ゼクシィ」、自動車関連情報サービス「カーセンサー」、高校生の進学情報サービス「リクナビ進学」などを展開